はじめに
飲食店を開業する前、私は「美味しい料理を出せばお客さんは来てくれる」と思っていました。
13年経った今、あの頃の自分に言いたいことがたくさんあります。開業前に知っておけば、もう少し楽に乗り越えられたこと。逆に、知らなかったからこそ飛び込めたこと。
これから開業を考えている方、開業したばかりで不安な方に向けて、13年後の視点から正直にお伝えします。
① 料理以外の仕事が想像以上に多い
開業前は「料理を作って、お客さんに提供する」という仕事のイメージしかありませんでした。
現実は全然違いました。
銀行への入金・支払いの振込・確定申告・備品の修理・アルバイトの制服管理——こういった雑用が毎日山のように発生します。誰もやってくれません。全部自分でやるしかありません。
飲食店の仕事は「料理」だけではありません。経営者・経理担当・総務担当・修理担当、全てを一人でこなす覚悟が必要です。開業前にこの現実を知っておくだけで、心の準備が全然違います。
② 見えないところでお金が減っていく
開業直後に一番驚いたのが、固定費の重さです。
まず家賃は売上に関係なく毎月必ず出ていきます。 お客さんが一人も来なくても、暇な月でも、家賃だけは容赦なく請求されます。これが個人店の経営を最も圧迫する固定費です。
さらに水道代・ガス代・電気代も同様です。売上があってもなくても出ていくお金が毎月積み重なることの重さは、やってみないとわかりません。
開業前に運転資金を多めに確保しておくことが重要です。「開業してすぐ売上が立つ」という前提で資金計画を立てると、開業直後の固定費の支払いで一気に苦しくなります。売上ゼロでも半年は耐えられるくらいの余裕を持っておくことが理想です。
③ 「暇すぎる時間」のメンタルがきつい
長時間働くことへの覚悟はしていました。でも想像していなかったのが、暇すぎてやることがない時間のしんどさです。
お客さんが来ない時間、一人で店に座っている時間。これが思った以上に精神的にきつい。忙しい時のしんどさとは全然違う種類のしんどさです。
この時間をどう使うかが、経営者としての差になります。メニューを考える、SNSを更新する、店内の細かい掃除をする——暇な時間を「準備の時間」と捉えられるかどうかが、長く続けられるかどうかの分かれ目です。
④ 最初から理想の客層は来ない
開業当初、何回か来てくれるお客さんでも、自分が望むような客層でないことが多くありました。
でも私が心がけていたのは、どんなお客さんでも一組一組を大切に接客することです。
理想の客層が来ないからといって手を抜いた接客をしていたら、常連客は絶対にできません。目の前のお客さんに誠実に向き合い続けることで、少しずつ自分の店に合った客層が育っていきます。常連客ができるまでの時間は、全員に対して丁寧に接客し続けた時間の積み重ねです。
⑤ それでも開業してよかった
13年続けてきて、開業して本当に良かったと思う理由が2つあります。
一つは、誰の指示も受けなくていいことです。小さい城でも、一国の主です。全ての判断を自分でできる。サラリーマン時代には味わえなかった感覚がそこにあります。
もう一つは、今でも忘れられない出来事です。売上が落ちていた時期に、思い切って「暇なので来てください」とLINE配信したことがあります。半分冗談のような正直な一言でした。
その日、来てくれたお客さんで店が満席になりました。
あの瞬間の感動は、13年経った今も覚えています。常連さんとの関係がどれだけ大切か、どれだけ心強いか。飲食店を続けていてよかったと心の底から思えた瞬間でした。
まとめ
開業前に知っておきたかったことはたくさんあります。雑用の多さ、家賃をはじめとした固定費の重さ、暇な時間のしんどさ、理想の客層がすぐには来ないこと——これらは全て、やってみて初めてわかることです。
でも同時に、知らなかったからこそ飛び込めたとも思っています。
大変なことの先に、満席の店と常連さんの笑顔があります。開業を考えているなら、怖がりすぎずに飛び込んでみてください。小さな城の主になる喜びは、やってみた人にしかわかりません。


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