小さな飲食店のメニュー価格の決め方|13年で学んだ値付けの本音

メニュー開発

はじめに

メニューの価格設定は、飲食店経営の中で最も悩む作業の一つです。安すぎれば利益が出ない、高すぎればお客さんが離れる。その絶妙なラインをどう見つけるか。

私は京都で鉄板焼きの16席の店を13年やっています。試行錯誤の末にたどり着いた、価格の決め方の考え方をお伝えします。


① 原価率より「1品の粗利」で考える

価格を決めるとき、多くの人が「原価率を30%以内に」と考えます。しかしこれには落とし穴があります。

全メニューを一律の原価率にするのは危険です。

大切なのは「この料理を1品売ったら粗利がいくらか」という視点です。

例えば原価率が40%の料理でも、売価が2,000円なら粗利は1,200円です。一方、原価率20%でも売価が500円なら粗利は400円しかありません。どちらが店の利益に貢献するかは明らかです。

メニュー全体のバランスを見ながら、粗利額が大きい商品をしっかり売れる構成にすることが価格設定の本質です。


② 競合店はあまり意識しない

近くに競合店ができると、どうしても価格が気になります。「あの店より高くていいのか」と不安になるのは自然なことです。

しかし私は競合店の価格をあまり意識しないようにしています。

もし競合店より少し高くなる場合は、付加価値をつけて価格を正当化します。 大切なのは価格を下げることではなく、その価格に見合う価値を作ることです。

そのときに効果的なのがメニュー名の工夫です。

例えば「チーズオムレツ」というメニュー名を「とろーりチーズたっぷりのふわとろ鉄板オムレツ」に変えるだけで、同じ料理でも価値の伝わり方が全然違います。お客さんは名前からイメージを膨らませます。魅力的な名前がついていれば、少し高くても注文してもらえます。


③ 値上げは「しれーっと」少しずつ。でも質は絶対に落とさない

食材費の高騰が続く中、値上げは避けられない現実です。しかし値上げの仕方には工夫が必要です。

私がやっているのは、一気に変更せず少しずつ上げることです。そして告知は一切しません。

一度に大幅な値上げをすると、お客さんの目に留まりやすくなります。しかし少しずつであれば、気づかないお客さんも多いです。実際、常連さんでも値上げに気づかないことはよくあります。

ここで絶対にやってはいけないことがあります。値上げが怖くて、料理の質を落とすことです。

例えば同じメニュー名のまま、使う肉の質をこっそり下げる。これは一番危険な選択です。お客さんは必ず気づきます。「あれ、前より美味しくなくなったよね」と感じた瞬間、そのお客さんは二度と来てくれません。

値上げに罪悪感を持つ必要はありません。食材の質を落とさずに店を続けるための正当な判断です。価格を上げることより、質を落とすことの方がはるかに怖いと心得てください。


④ よく出る商品は強気の価格でいい

お客さんの反応を見ながら価格を調整することも大切です。

リピートが多い商品、よく出る商品は少し高めに設定しても問題ありません。

「ちょっと高いかな」と思いながら設定した価格でも、人気商品であれば引き続きよく出ます。お客さんはその料理の価値を認めているから注文するのです。

逆に出ない商品は、価格よりも料理自体の魅力や見せ方を見直す方が先です。安くしても出ない商品は、価格以外に原因があります。


まとめ

メニューの価格設定は、原価率だけで決めるものではありません。1品あたりの粗利、付加価値の見せ方、値上げのタイミング、お客さんの反応——これらを総合的に判断することが大切です。

値上げを恐れて質を落とすのが一番危険です。お客さんは必ず気づき、離れていきます。価格に自信を持つためには、料理の質と見せ方を磨き続けることが一番の近道です。「高い」と言われるより「美味しくない」と思われる方がずっと怖い。その気持ちを忘れなければ、自然と適正な価格が見えてきます。

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